ベルトコンベアの発明と歴史

2019/10/28

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しさく解体新書
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「コンベア」とは、材料、半製品、貨物などを連続的に運搬する自動装置です。日本工業規格(JIS)においては「荷を連続的に運搬する機械」と定義されています。そのルーツといえるのは、古代文明で用いられた「コロ」でしょう。これは丸太の上に板を置き、その上に大きな石や木といった材料を乗せて運ぶ道具のことで、ピラミッド、オベリスク、城の石垣などバベルの塔など、大型建造物の建設に必要不可欠なものでした。なお、古代エジプトでは、麻帆布ベルトを用いてレンガを運搬する、現在のベルトコンベアのような仕組みが使われたとの記録があるそうです。

 

コンベアには、よく知られているベルトコンベアやチェーンコンベアをはじめ、ローラコンベア、スクリューコンベア、振動コンベアなど用途に応じて様ざまな種類があり、工場内での部品や半製品の運搬・移動、鉱山や港湾での石炭・鉱石・貨物の運搬、建設工事における土砂・石などの運搬などに広く使用されています。

 

コンベアの主な用途は、次のようになっています。

・ばら物用:石炭や鉱石、土砂、穀物といった塊、または粒状のような「ばら物」を搬送する。

・かさ物用:箱状や袋状など、一単位にまとめられた物体、またパレットに積載された物(かさ物)を運ぶ。

 

たとえば、ベルトコンベアは、箱物、袋物、粒状物など、ばら物、かさ物、多くの搬送物に対応できます。一方、ローラコンベアは、搬送物の底が平らなものに適しているので、かさ物や搬送などに使われることが多いです。

 

汎用性の高い「ベルトコンベア」

コンベアの中で、最も多いのは「ベルトコンベア」です。これはフレームの両端に設けたプーリにコンベアベルトを張り、モータから伝えられた動力をプーリが受け、ベルトの上に載せた材料、半製品、荷物を搬送する仕組みとなっており、コンベアベルトの材質には用途に応じてゴム、綿布、樹脂、フェルト、スチールなどが使われます。

 

ベルトコンベアの特徴としては、「搬送物がベルト上で移動するため、安定的な搬送が可能」「構造が単純なので難しい仕組みが不要」「搬送物とベルトの間に摩擦が少なく、耐久性が良い」「ベルトの種類が多いので、汎用性が高い」「部品点数を増やさず、ベルトとフレームを伸ばすことで搬送距離を長くできる。そのため価格を抑えることが可能」などがあげられます。

 

ベルトコンベアの登場と活用

現在のようなコンベアが登場するのは19世紀のことです。もともとは土砂や石炭などのばら物を運んでいたそうで、1866年(慶応2 年)、英国での帆布入りゴムコンベアベルトの運転に端を発し、1900年代にかけて、ベルトコンベア、スクリューコンベア、慣性コンベアなどが欧米で研究開発されるようになりました。

日本に入ってきたのは明治時代のことで、この時、いち早くベルトの製造を始めたのは、1906年(明治39年)に創業したゴム・プラスチック製品のメーカー「阪東調帯(現バンドー化学)です。創始者であり技術者の阪東直三郎は、1913年(大正2年)、当時主流であった皮革製のベルトに代わる木綿のベルト、日本最初の電動ベルトとなる「阪東式木綿調帯」の製造をスタート。1913年(大正2年)にゴムベルト、1921年(大正10年)にはコンベアベルトの製造も始めます。さらに1932年(昭和7年)、日本初のVベルトの製造を開始するなど、日本のコンベアベルトを支え、現在に至っています。

 

ベルトコンベアと自動車王、ヘンリー・フォード

ベルトコンベア搬送用のみならず、自動車の組立ての工程に用いて、飛躍的な生産性を実現したのが、ヘンリー・フォードです。自動車を金持ちの贅沢品ではなく、誰にでも利用できる大衆車とすることを決めたフォードは、自動車の大量生産を思いつきます。それまで自動車1台を組み上げるには、2~3人の工員が数日かけて行っていました。フォードはばらつきのあった部品を規格化、部品互換性を確保することで、1909年には1年間で1万8千台のT型フォードを生産したのです。

 

さらに1913年には、世界で初となるベルトコンベア式組み立てラインを導入。部品の規格化に加え、内製化、流れ作業による分業化で、1台の組み立て時間は2時間40分にまで短縮されます。その結果、年生産台数は25万台を超え、1920年までに100万台を突破したのです。

 

フォードの導入した生産方式は「フォードシステム」と呼ばれ、このシステムを科学的に管理しようという動きも現れます。その代表が、アメリカの機械技師、フレデリック・W・テイラーらが提唱した「科学的経営管理法」で、一般には「テイラー・システム」として知られています。テイラーらは、作業時間を計るなど各作業を分析し、一日の仕事量の基準を設定。これを「課業(「タスク」「ノルマ」)」として労働者に与え、使用道具は均一にし、成果を上げた者には賃金にプラスして支給を行い、逆に未達成の者からは差し引く仕組みを考え、生産性を向上させようとしました。また、現場の管理のために、職長の権能を計画と執行に分ける「職能的職長制度」も導入することで、工場(職場)の仕事の能率向上を図ったのです。

 

ベルトコンベアの可能性

ベルトコンベアが開発され、さまざまなシーンで使われることで、人々の生活は変わったといっても過言ではありません。また、フォードが確立した「フォード・システム」、それを受けて登場した「テイラー・システム」は、現代に続く働き方の礎となっています。

 

近年の少子化・高齢化社会の影響により、今後はさらなる労働者不足が予測されます。その際、工程や作業を自動化するベルトコンベアは、労働力不足を解消する方法として、あらゆる業種で必要となることでしょう。

 

「素材」の大切さ、そして難しさ

同じベルトでも、今のベルトコンベアに辿り着くまでに「素材」が様々に変化してきました。

世の中の優れた製品を支える影には、往々にして優れた「素材」が存在しています。

それだけ「ものづくり」において素材は重要なのです。しかし、本当に良質な素材を提供できる素材メーカーというのは限られています。日本軽金属グループは、アルミニウムに対する豊富な知識と経験を有し、常に日本のアルミニウム業界を牽引してきました。そして我々はこれからも「異次元の素材メーカー」を目指し、よりお客様のご要望に正確に応えるための研究・開発を行なってまいります。アルミニウム製品に関するご相談や、試作品のご相談なら、ぜひShisaku.comへ。

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