アルミが「リサイクルの王様」と呼ばれるわけ

2020/08/25

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「資源を枯渇させない」「公害などで環境に負荷を掛けない」といった理由で、どんな資源や原材料も大事に扱われるようになりました。中でもアルミニウムは際立っていて、しっかりとしたリサイクルのシステムが確立されています。「リサイクルの王様」といった呼び方をする人も少なくありません。アルミ缶を中心にそのリサイクルの様子を見てみましょう。

 

アルミを新しく精錬するには

アルミニウムをリサイクルしないならば、鉱石を精錬して新しく取り出さなければいけません。

 

世界にはふんだんあるアルミニウム資源

アルミニウムは地球の地殻に含まれる元素としては酸素、ケイ素に次ぐ3番めの多さです。また、いろいろな鉱石に含まれていますが、工業的に使われるのは主にボーキサイトで、この埋蔵量は「今世紀中に枯渇することはまずありえない」とされています。アルミニウムで考えてもボーキサイトで考えても「これほど十分にある地下資源はほかにはない」といったところでしょう。

 

日本ではボーキサイトは採れない

ボーキサイトの鉱床(鉱物が密集している部分)は残留鉱床の一種です。地表の岩石が風化する際に、分解したり流れ出したりしない成分や鉱物が残ってできます。これが盛んに起こるのは熱帯地方なので、ボーキサイトの埋蔵量が多いのも、ギニア、オーストラリア、ブラジルといった赤道に近い国々か、かつては熱帯だった地方です。

 

ボーキサイトからアルミを精錬することもやっていない

かつて日本では、ボーキサイトを輸入し、それを原料としてアルミニウムを精錬することも行われていました。しかし、その精錬の過程には電気分解があり、大量の電力を消費します。原油価格が上昇し続け、電気代もそれに連れて上昇したことで、日本国内でのアルミニウム精錬は採算が取れなくなりました。2014年を最後に弊社日本軽金属㈱で運営していた精錬工場も操業を停止した結果、日本国内には1カ所もなくなりました。

 

つまり、日本で使われるアルミニウムは、「海外で精錬されて地金になってから輸入された。あるいは、それが加工されてアルミニウム製品になってから輸入された」でなければ、リサイクルされたものしかありません。

 

アルミ缶のリサイクル

アルミニウム製品の中でも、大量に使われ・大量に回収されているということでは、ジュース類などのアルミ缶以上のものはないでしょう。

 

アルミ缶のリサイクル率は90パーセント超

2018年度の飲料用アルミ缶の国内需要は約217億本でした。国民1人あたりにすると、約170本あまりになります。赤ん坊まで含んでの数字ですから、実際には200本ぐらいになると考えていいでしょう。

 

同年度の回収率(リサイクル率)は93.6パーセントでした。また、改修されたアルミ缶が再び缶の材料となる率を「CAN to CAN率」といいますが、これは71.4パーセントでした。この再生されたアルミは専ら、ボディー(胴)の部分に使われます。上下のエンド(蓋)の部分には、初めて製品に使われる新しいアルミを使います。新しいアルミの方が強度があり、缶に飲み物などを封印するときに、エンドにより負担がかかるために、このような使い分けがされています。

 

また、アルミ缶に使われなくても、自動車部品などほかのアルミ製品にも生まれ変わります。これほど確実にリサイクルされ、しかもうまく回転している素材はほかにはないでしょう。ちなみに、同じ年度のペットボトルのリサイクル率は84.6パーセントでした。

 

回収されたアルミ缶がアルミ地金になるまで

分別収集・集団収集・拠点収集などされたアルミ缶は、再生工場に運ばれます。ここで、表面の塗装やフィルムをはがしたあと、700℃以上の高温で溶かされます。これを固まりにしたのがアルミニウム再生地金です。アルミ缶のボディー部分になるのも、この再生地金を薄い板状に加工したものです。

 

ただ、せっかく回収しても既に品質の落ちているものも中にはあり、その場合の多くは自動車部品などアルミ缶以外の原材料に回されます。

 

リサイクルで作るアルミ地金で電力も大幅セーブ

資源としては十分にあるはずのアルミニウムをこんなにしてまで、丁寧に再生するのには、「エネルギー資源の節約」という理由があります。

 

新品のアルミ地金に比べ、リサイクル地金はたった3パーセントの電力しか使いません。電気代の高い日本では、その分だけコストも下げることができます。「『リサイクルの王様』として扱われるのには、それだけの理由がある」といったところでしょう。

 

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