ヒートシンクにハードディスク パソコンはアルミニウムがなければ成り立たない

2020/09/28

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しさく解体新書
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アルミニウムは鉄と並んで、最も身近な金属です。アルミホイル、アルミサッシ、鍋(なべ)などの調理器具、あるいは多くの家電製品のパーツになっています。パソコンもまた、アルミがなければ成り立ちません。構造が複雑なだけにアルミの持つ様々な機能がふんだんに利用されているのが、ほかの家電製品類に比べての特徴といえそうです。

 

冷却のためのパーツ

アルミが家電品に利用されるのは、「加工しやすい」「コストが安い」などが主な理由でしょう。もうひとつ、「熱伝導率が高い」もアルミの特徴で、パソコンの中では冷却装置として多用されています。

 

アルミの熱伝導率

「熱伝導」とは、その名前の通り「ある物体の中で物質の移動を伴わずに、高温部から低温部に熱が移動する現象」のことをいいます。「熱伝導率」は「どこかを熱したら、いっぺんにその熱が全体に広がる。その度合い」と言い換えてもいいでしょう。

 

熱を持ったほかのものに熱伝導率の高いものを密着させれば、いっぺんにその熱を吸い取りもします。これを利用して、冷却装置としているわけです。

 

アルミニウムよりも熱伝導率の高い物質には、その順番にダイヤモンド・銀・銅・金があります。しかし、銅以外はいわゆる貴金属なので気軽に使えるようなものではありません。

 

銅だけは実際に使われていて、熱伝導率も約200のアルミニウムの倍の約400もあります。ただし、金などに比べ格段に安価とはいえ、アルミニウムよりも高額です。そのため、パソコンの中の冷却装置としてはまったく同じ目的のパーツで、性能重視ならば銅製、コスト重視ならばアルミ製といった使い分け方がされています。

 

ちなみに鉄の伝導率は100を下回るために、冷却装置に使われることはありません。

 

ヒートシンク

使っているのが、デスクトップパソコンであるのならば側面のボードを外してみましょう。いくつものアルミニウム製のヒートシンクが使われているはずです。その多くは、高温になるチップセット(大規模集積回路)に密着させているはずです。

 

多くのフィン(突起)が設けられているのではないでしょうか。空気の接触面積を増やすためのものです。つまり、チップセットの熱をヒートシンクが奪い取り、その熱を空気中に放つことで、チップセットを冷やしています。

 

CPUクーラー

CPUは日本語では中央演算処理装置といい、やはりチップセットの一種です。人間ではよく頭脳に例えられる、パソコンの中の最重要部品です。多くのもので、ヒートシンクとファンを組み合わせたCPUクーラーが取り付けられています。ファンはもちろん、ヒートシンクの熱を空気中に放つ助けをするのものです。

 

CPUクーラーのヒートシンク部分は最も安価なものはすべてアルミでできています。発熱量の少ないCPUならば、事足りることも多いかもしれません。しかし、それでは冷却性能が不足する場合は、CPUと直接密着する部分だけ銅製にしたり、あるいは全部を銅製にしたりすることで性能をアップさせています。

 

パソコンケース

パソコンケースの素材はかつてはほぼ、スチール(鉄)製しかありませんでした。オールアルミ製のパソコンケースが登場したのは、1990年代の後半ぐらいです。かなり高価で、自作用のケースが2万円台3万円台ということも珍しくありませんでした。しかし、当時はパソコンの自作がブームで、高性能機を組みたい人たちからの熱い支持を受けました。

 

現在では価格も下がり、自作する場合にも、製品化されたものを買う場合にも、一般的な選択肢のひとつとなっています。

 

アルミ製のパソコンケースを選ぶ人の中には、「冷却性能が高い」を理由に上げる人が少なくありません。やはり、熱伝導性の高さを期待して、「パソコン内の熱がケースのアルミ素材を通して空気中に放たれる」と考えているようです。ただし、「一般的なパソコンケースにはファンなどでの排気も工夫されていて、アルミによる放熱性はほとんど影響しない」との声もあります。

 

もしそうであっても、アルミ製パソコンケースは、軽さと素材感から来る見た目のよさもあるので、有力な選択肢であることには変わりはないでしょう。

 

ハードディスク

ハードディスクはもちろん、パソコン内の記録装置です。

 

外装がアルミ合金を成型したアルミダイカストであるだけではありません。中にあって、実際に記録が書き込まれるプラッター(円盤)も最も一般的なものはアルミ製です。また、古い時代の記録装置であるフロッピーディスクの場合は、円盤にプラスチックが使われていました。「それに比べて硬い円盤が使われている」ということから、「ハードディスク(hard disk)」の名前も付いています。

 

コンデンサー

コンデンサーは別名を「キャパシタ」といい、電気を蓄える部品です。電圧を安定させたり、電気信号に乗っているノイズを取り除いたりするのには欠かせません。「現代のあらゆる電化製品に使われている」といっていいぐらいで、特にパソコンの場合は数百ものコンデンサーが使われています。

 

中には2枚の導電板があり、ここに電気が蓄えられます。ほとんどの場合、この導電板の素材がほとんどの場合アルミです。

 

スマホなどでも各種アルミ部品が大活躍

アルミで作られた部品が様々な機能で活躍しているのは、スマホやタブレットでも変わりはありません。ただ、サイズが小さくなることだけパソコンとの違いです。

 

中には外装部分にプラスチックなどを使っている製品もあります。しかし、今のところほとんどの場合、アルミのほうが丈夫です。また、高級感もあります。

 

パソコンもスマホなども、特にアルミ製品とは意識していないかもしれませんが、アルミがあってこそ初めて成り立つ工業製品です。

 

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