最初のレトルト食品は月旅行のお伴?レトルトの発明と歴史

2019/10/18

カテゴリー
しさく解体新書
キーワード

レトルトの歴史は、レーション(軍用携帯食)の開発に始まります。それまで採用されていた缶詰は重く、空き缶処理に問題があったため、新たなレーションとして、1950年半ばから米国イリノイ大学で研究が進められました。1950年後半には、「アポロ計画」に代表される宇宙開発に際し、アメリカ陸軍ナティック(NATIC)研究所も開発に着手。1969年、史上初の月着陸に成功した月面探査船「アポロ11号」には、レトルトパウチ食品が搭載され、ニール・アームストロング船長以下、乗組員たちの食料となったのです。

 

アポロ11号の成功で、1960~70年代、アメリカやヨーロッパでは家庭用レトルト食品の実用化が試みられました。しかし、当時のアメリカ家庭では冷凍食品の普及が進んでおり、食物を常温保存する必要性が高くなかったこと、ローストなど、調理はオーブンでの加熱が中心だったことから、レトルトパウチ食品はすぐに一般化されることはありませんでした。

 

国内における「レトルト食品」の歴史と基礎知識

「レトルト食品」の「レトルト」とは、もともと缶詰や袋詰にした食品を加圧・加熱・殺菌する装置(高圧釜・蒸留釜。身近な調理器具でいえば、「圧力鍋」のようなもの)です。この装置を用いて、内容物(調理済み食品など)を入れ、密封シールしたパウチ(高圧釜で高温加熱殺菌するため、食品を封入する袋)や容器を、食品衛生法で定められた「中心温度120℃4分相当以上」で加熱処理を行ったものを「レトルト食品」と呼んでいます。保存は常温で1年以上。なお、レトルト食品は包装形態から3つの種類に分けることができます。

 

・レトルトパウチ食品:調理済み食品(カレー類、シチューほか)、食肉加工品(ハンバーグ、ミートボールなど)、水産加工品(ウナギのかば焼き、さんまのかば焼き、サバみそ煮ほか)、米飯澱粉食品(赤飯、牛めし、チキンライスなど)など、製品の種類や生産量も多く、レトルト食品の主流。包装形態は四方がシールされたパウチ状で、透明とアルミ箔パウチがある。

・レトルト容器食品:トレー状の容器に詰め、ふたをしたあとレトルト殺菌した製品。透明トレー、アルミ箔トレーの2種類がある。レトルトパウチ食品と同じく、調理済み食品、食肉加工品、水産加工品、米飯澱粉食品といった種類があり、特におでんやおかゆなど液状の食品も含まれる。

・レトルトパック食品:一方をアルミワイヤーでクリップした包装材料の中に食品を詰め、他方を同じアルミワイヤーでクリップしレトルト殺菌した食品。魚肉ハム・ソーセージ、かまぼこなどが主体だが、業務用カレー、ミートソースにも用いられている。

 

近年は技術も飛躍的に進歩し、354,697トン(国内生産数量統計。2017年。公益財団法人「日本缶詰びん詰レトルト食品協会」データ)の生産量を誇る日本のレトルト食品ですが、商品として発売するまでには、大変な苦労があったといいます。

 

というのも、レトルトは米国の技術であり、その内容はわからず、パウチに使う包材も、レトルト釜もない状況だったからです。そのため、開発に携わった企業は、工夫をこらしてレトルト釜やパウチを自作したといいます。最初のうちは中身がレトルト釜で破裂していたそうですが、加圧と加熱のバランス調整、パウチの強度や耐熱性、殺菌条件などのテストを繰り返し、試行錯誤の末に世界初のレトルト商品が登場しました。

 

「アルミ箔パウチ」採用で、美味しさの持続力アップ

ただ、当時のパウチは低圧ポリエチレン/ポリエステルの2層構造の半透明仕様だったため、光と酸素によって風味が損なわれてしまい、賞味期限は短く、冬場で3ヶ月、夏場で2ヶ月。また強度不足が原因で落下や振動に弱く、搬送で破損したり、密封が不完全であったため、突然破裂することもありました。これらの問題を解決したのがアルミ箔です。湿気・酸素・光線などを遮断、優れた防湿性、保香性、強度を兼ね備えたアルミ箔を、パウチに採用。ポリエステル/アルミ箔/ポリプロピレンという3層構造のパウチによって、衛生性が高まり、常温での長期保存が可能となったのです。賞味期限は2年間に延び、さらに丈夫かつ軽量なため、流通時の破損も少なくなりました。

 

新たなパウチによって、カレーやハンバーグ、ミートソース、スープやシチューなど、さまざまな種類のレトルト食品が作られるようになります。アルミ箔の性質を用いたパウチは、今に至るレトルト食品の隆盛を築き上げたといっても過言ではないでしょう。

 

レトルト食品になくてはならない包装材

レトルト食品は、今や家庭の食卓に欠かせない食品のひとつとなっています。その主なメリットには、以下のようなものがあります。

 

1:高温短時間で殺菌するので、食品の品質劣化が少ない

2:レトルトにより、保存料や殺菌料を使用しないので安全かつ衛生的

3:酸素、光線による風味の劣化がない

4:真空下で処理されるため、ビタミンといった栄養素の消失が少ない

5:常温で長期間(1~2年)の保存が可能

6:パウチのまま、短時間で調理できる

7:油性食品にも耐性がある

8:軽量かつ丈夫なので、携帯用としても便利に持ち運びができる

 

レトルト食品が多くのメリットを有することができたのは、やはりパウチにアルミ箔を採用したことが大きな要因になっているといえます。レンジ調理には向かないというデメリット(「マイクロ波を吸収するため、中身が温まらない」「マイクロ波を吸収して、火花が出る可能性があり危険」)はありますが、品質劣化速度を抑え、長期保存が可能であるアルミ箔は、レトルト食品になくてはならない包装材だといえるでしょう。

 

アルミニウムの可能性を追求し多様化する要望に応える

日本軽金属グループの東洋アルミニウムでは、キッチンで使われるアルミホイルから長期安定性を要求される二次電池・コンデンサ等の電極材料及び耐食性の要求される工業材料まで、お客様の多様化するニーズにお応えすべく日々研究開発に取り組んでいます。

Shisaku.comでは上記の箔のような部材もグループのネットワークを活用することで小ロットから調達することが可能です。試作用の材料も是非ご相談ください。

キーワード

ページトップに戻る