ニーズが進化を生む「建築材」がアルミ建材(屋根・外壁)に至るまで

2020/03/23

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しさく解体新書
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竪穴式住居から自然環境によって多様化した住居

住居(住宅)は、人が住むことを目的とする建物です。原始の人々は、洞穴や樹木の上などで暮らしていたようですが、中石器時代にはヨーロッパにおいて、「竪穴式住居」が作られるようになります。これは地面を掘り下げて床とした半地下構造の住居。柱、梁や垂木で骨組みを作り、その上に土や葦などの植物で屋根を葺くという構造になっており、新石器時代になるとアジア、アメリカ大陸といった世界各地に広まっていきました。日本でも、竪穴式住居は日本でも縄文時代早期~古墳時代の間、一般的な住居として利用されますが、その一方で「高床式住居」も建てられます。これは東南アジアから伝わったともいわれ、地面より高い場所に床面を設け、はしごなどを使って出入りする住居。一族の首長級の住まいとして用いられたほか、穀物などが腐らないよう倉庫としても利用されたようです。

原始における、住居の主な目的は、雨や風、暑さや寒さといった気候環境、猛獣や毒を持った動物、敵対する人間(部族)などから身を守ることでした。その後、文明が起こり、政治・宗教・文化を有するようになると、住居の意味や在り方も変わっていきますが、住宅の形状や構法、建材を多様化させたのは、やはり住む人を取り巻く自然環境だと考えられています。たとえば、凍結した雪を用いたイヌイット(アラスカ、カナダの北極海沿岸、ツンドラ地帯に住む先住民族)の「イグルー」は保温性が高く、北極圏周辺の気候に適応。対して最高気温が40℃を超える西南アジアや北アフリカでは、熱気の侵入や影響を避けるために、厚い土壁や日干し煉瓦の壁で築いた閉鎖性の高い住居が作られています。また、構造面では雨の多い地域では、傾斜屋根や高床式住居で室内への雨の侵入を防止。多雪地帯も同様に、屋根に雪が積もらないような構造の住居が発達しました。

このように、自然環境から住む人を守る、シェルターとしての住居を考える場合、基本になるのは「壁」と「屋根」です。日本においても、生活様式や自然環境に応じた建材や構法を用いた家屋が建てられてきました。

木材と土から始まった日本の外壁

日本における外壁のルーツは、「登呂遺跡(静岡市登呂に残る、弥生時代後期の遺跡)」の「板校倉」から派生した「校倉造(東大寺の正倉院や唐招提寺の宝蔵・経蔵などが有名。柱を使用せず、三角形、台形の木材を井桁に積んだ壁)」だといわれています。中でも貴族や権力者の家屋、寺社仏閣では「板壁(板張りの壁)」が主流でした。一方、土壁も古代からあったようですが、飛鳥時代(6世紀末~7世紀)に約5000年前のピラミッド、古代ギリシャ、ローマの建築物にも使われた「漆喰(砂、海藻のり、すさを消石灰に混ぜ、水で練った材料)」の加工技術が日本にも伝来。「高松塚古墳(彩色による人物像や四神図などで知られる、7世紀末~8世紀初頭の円墳)」や「キトラ古墳(7~8世紀。皇族あるいは貴族の墓と推定)」に漆喰が用いられ、「土工」「白土師」「灰工」といった職人も現れます。なお、奈良時代初期の壁工事には、上塗り用として主に白土(白粘土)が使用されるようになります。



奈良時代末期~平安時代初期になると、土や漆喰を厚く塗って耐火構造にした「土蔵」が登場。また寝殿作りの建物には「塗り籠」が作られました。室町時代(14~16世紀)後期、茶道の普及に伴い登場した「数寄屋造り(茶室建築の手法を取り入れた住宅様式)」に必要だったことから、土壁は広く日本家屋に採り入れられます。桃山時代になると、壁塗を行う職人は「左官」と呼ばれるようになりました。

とはいえ、姫路城などに代表される漆喰による壁は高価だったため、大名といった権力者、豪商や豪農といった富裕層の住まいにしか使われませんでした。米のりを使った高価な漆喰よりも、比較的手頃な海藻のりを使った漆喰が登場するのは、江戸時代になってからのこと。耐火性・耐久性に優れた漆喰塗りが普及し、様ざまな外壁や建物が作られるようになります。町民の家にも、土壁や漆喰を用いた家屋が増えていきました。

 

木造モルタル造りから多様な外壁建材へ

明治になると、日本の近代化に伴い、西洋の建築様式が採り入れられるようになります。外壁にも、コンクリートをはじめ、モルタルや石膏プラスター、ドロマイトプラスターなど、いろいろな建材や素材が使われるようになり、左官の技術も向上していきます。中でもモルタル外壁は、1923年(大正12年)に起こった関東大震災で、東京の木造建築が焼けてしまったことをきっかけに、復興に際して利用され始め、これが少しずつ全国へと普及していきました。水とセメントと砂を混ぜ合わせたモルタル壁の主な特徴が耐水性、耐火性、耐久性に優れているという点だったことから、1990年頃までの日本家屋はモルタル造りが主流でした。近年は「窯業系サイディング」のシェアが大きくなっており、ほかには先述した「モルタル」「金属サイディング」「ALC」「タイル」「羽目板(板張り)」といった外壁が採用されています。

・窯業系サイディング:現在、新築木造住宅の70%以上が採用する外壁材です。セメントに無機物や繊維を混ぜて板状にしたものを、タイルや石積み風などに加工。豊富なデザインとカラーバリエーションが用意されている。また手頃な価格で機能性が期待できるという、コストパフォーマンの高さも人気の要因。デメリットはコーキング材(目地から水が浸入するのを防ぐ素材)が数年で割れたり隙間が開くこともあり、注意が必要。
・ALC:珪石、セメント、生石灰、発泡剤のアルミ粉末を主原料とした軽量気泡コンクリート建材。断熱性・耐衝撃性・耐火性などに優れ、「夏涼しく、冬暖かい」という性質を持つ。
・タイル:石材や粘土を粉砕し、焼き固めて作る外壁材。耐候性や耐久性に優れている商品も多く、また高級感を有するのが特徴。タイルの素材や下地材によって、コストが上がる点がデメリット。
・羽目板(板張り):木そのものの質感を活かした外壁。主流はスギやヒノキだが、豊富な種類があるので、建材としては比較的安価。デメリットは腐食しやすいので、保護材の塗布が必要。素材によっては反りがでることもある。また火災対策は考えておきたい。

 

リフォーム、メンテナンス性の高さで注目されている「金属サイディング」

近年、注目されているのが「金属サイディング」です。これは発泡系樹脂断熱材を補強材として成形された、鉄やアルミニウムなどの外壁材。特にリフォーム、メンテナンスの面で、他の外壁材より優れているのが特徴。たとえば、築30年以上の外壁は内側も痛んでいる場合が多く、そのような建物を外壁カバー工法でリフォームすることが可能です。また錆びにくいため、メンテナンスに手間がかからない点もメリットだといえます。なお、デメリットは他の外壁材に比べるとコストが高くなりやすいことです。

金属系サイディングには、「アルミサイディング」「ガルバリウム鋼板サイディング」「ステンレスサイディング」などの種類があります。中でも多く採用されているのが「アルミサイディング」と「ガルバリウム鋼板サイディング」。それぞれの特徴には、次のようなものがあります。

・アルミサイディング:アルミニウムを使用したサイディングボード。デザイン性・耐久性・断熱性・防火性などに優れているが、特に軽量性が優秀なので、建物自体への負担がかからないという点が大きなメリットとなっている。

○その他のメリット
・軽量かつ変形に柔軟に対応できるため、地震の揺れやひび割れに強い
・錆びにくい(アルミニウム自体の特性)
・防水性が高く凍害にも強い
・金属表面材と断熱材が一体成型されているため、外の気温の影響を受けにくく、断熱性が高い
・防音性に優れている
・金属ならではのシャープな質感

なお、デメリットとしては、衝撃に弱くキズがつきやすい、色のバリエーションが限られるなどがあげられます。

一方の「ガルバリウム鋼板サイディング」ですが、これは鉄でできた板に金属メッキ(シリコン、亜鉛、アルミニウム)を施したものです。主なメリットには、次のようなものがあります。

・錆びにくい
・耐久性、耐熱性が高い
・耐震性に優れている
・デザインの種類や色が豊富
・多くのメーカーが保証を付けている

デメリットは、アルミサイディング同様、コストがかかること。メンテナンス性も高いですが、まったく劣化しないわけではありません。

とはいえ、従来の建材のメリットを数多く有している金属サイディングは、台風や地震といった災害が懸念される日本において、防災性の高い外壁といえるでしょう。

 

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