ボーキサイトがアルミニウムになるまで

2020/10/05

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しさく解体新書
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アルミニウムはとても化学的な活性が高い金属です。「ほかの元素と簡単に結びついてしまう」と言い換えてもいいでしょう。そのために、アルミニウムという金属が知られるようになってから、たかだか200年しかたっていません。もちろん、本格的に利用されるようになったのはそれよりあとです。また、現在でもその鉱石であるボーキサイトから精錬するには、かなりのコストがかかり、とうとう日本では精錬工場がなくなってしまったぐらいです。その精錬の工程をご紹介しましょう。

 

ボーキサイトとは

アルミニウムは主にボーキサイトから取り出されます。残念ながら日本で産出しません。つまり、「アルミニウムも日本では採れない」と同じことと考えていいでしょう。

 

アルミニウムを含む鉱石

アルミニウム(元素記号=Al、原子番号=13)は、地殻の中にあるものしては3番めに多い元素です。それよりも多いのは酸素とケイ素なので、金属に限ってみると第1位です。

 

ただし、自然界でそのままで存在することはほとんどなく、ほかの元素と化合しています。このアルミニウムの化合物を含む、鉱石としては、長石・雲母・カオリナイトなどもありますが、工業的に利用されるのは専らボーキサイトです。

 

ボーキサイトは残留鉱床の一種

ボーキサイトは「アルミニウムの鉱石」と表現されることが珍しくありません。しかし、「鉱石」のイメージとはやや違い、「粘土が固まったもの」程度の比較的軟らかいものです。また、日本語では「鉄礬土(てつばんど)」といい、色は灰色、あるいは赤褐色をしています。

 

単独の鉱物や鉱石と考えるよりはむしろ、「様々な鉱物や鉱石が堆積(たいせき)して、固まりつつあるもの」と理解したほうがよさそうです。実際に酸化鉄や二酸化ケイ素なども大量に含んでいます。

 

残留鉱床の一種でもあります。地表にある岩石などが風化・浸食作用を受けると、水に溶けやすい成分や分解されやすい鉱物はそこからはなくなり、逆のものしか残りません。これらが集まったものが、「残留鉱床」といいます。

 

ボーキサイトの産出量と埋蔵量

ボーキサイトの場合は、アルミの化合物であるギブサイト(Al2O3・3H2O),ベーマイト(Al2O3・H2O)が残留しています。また、これら作用が起こるのが主に熱帯地方のために、ボーキサイトの生産地も熱帯地方か、あるいは過去に熱帯であった場所に限られます。具体的には埋蔵量の確認されているのが多いのは、ギニア、オーストラリア、ベトナム、ブラジルの順です。

 

また、産出量については、オーストラリア、中国、ギニアなどが多く、2017年度の産出量(単位=千トン)は順に、87,898、60,788、42,715でした。このうち、中国はアルミニウムの消費量も多いために、ボーキサイトをこれだけ産出していても不足分を輸入に頼っています。

 

ボーキサイトの輸入は激減

ピーク時の2008年には600千トンものボーキサイトを輸入し、国内でアルミニウムにまで精錬していました。しかし、現在では国内にアルミニウム精錬工場はありません。ボーキサイトの輸入は細々と続いているものの、これらは耐火物・セラミック部材などに必要なアルミナ製造のためのものです。

 

アルミニウム精錬の手順

今、日本ではあるアルミニウムの精錬は行われていません。専ら中国などでアルミニウムにまでなったものを輸入しています。精錬方法としては、「バイヤー法」と「ホール=エルー法」の併用が主流になっています。

 

バイヤー法

1888年、オーストリアのK.J.バイヤーが考案しました。

  • 加圧・加熱することで、ボーキサイトをカセイソーダ液に溶かす。
  • これでできたアルミン酸ナトリウム溶液を濾過(ろか)して残す。
  • このアルミン酸ナトリウム溶液を冷やして、沈殿物(水酸化アルミニウム)を取り出す。
  • 沈殿物を1,200℃以上で焼くことで、アルミニウムの酸化物であるアルミナ(Al2O3)ができる。

 

ホール=エルー法

1886年,アメリカのではC.M.ホールが、フランスではP.エルーがそれぞれ独自に、同じ方法で考案しました。そのため、2人の名前が付いています。これはアルミナをアルミニウムにまで精錬する方法なので、バイヤー法に引き続いて行うことになります。

 

電気分解によって、純度の高いアルミニウムを取り出す方法ですが、アルミナは融点が2,000℃と高いために、まずは1,000℃まで熱くして液体状にした氷晶石(Na3AlF6)に溶解させます。

 

この溶液の中にいずれも炭素を陽極・陰極として電気を通すと、陽極の炭素(C)とアルミナの酸素(O)が結びついて、一酸化炭素や二酸化炭素ができます。一方、陰極にはアルミニウム(Al)が引き寄せられることになります。

 

これで、おおよそ99.8パーセントの純度のアルミを取り出すことができます。さらに高い順度のものを作る場合は、さらにほかの方法で電気分解を繰り返す「三層電解法」を行います。

 

アルミニウムは「電気の缶詰」

このふたつの方法が考案されたことで、アルミニウムの大量生産が可能になりました。しかし、近年の日本の場合、ネックとなったのがホール=エルー法での工程でした。大量の電力を消費します。そのため、アルミニウムには「電気の缶詰」との呼び名まであります。

 

1973年の「オイルショック」により原油の価格が跳ね上がり、電気料金もそれに連れて上昇しました。アルミニウムの精錬は次第に利益を出すことが難しい事業になっていきました。最後まで残った日本のアルミニウム精錬所は弊社日本軽金属の蒲原工場(静岡市清水区)にございましたが、2014年3月末をもって撤退することとなりました。

 

現在では、水力発電が盛んだったり、自国で石油を賄える国などが、盛んにアルミニウムの精錬を行っています。

 

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