種類豊富でレベルの高い日本の爪切り

2019/10/01

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ネイルにこだわる場合は別として、人は爪が伸びたら、爪を切ります。中にはやすりで削る人もいるでしょう。現代人は当たり前のように「爪切り」という道具を使いますが、お馴染みの「クリッパー式爪切り」が登場したのはわりと遅く、昭和になってからのこと。それ以前は「ニッパー式爪切り」やはさみ、小刀を使い、爪を切っていました。現在、使われている爪切りには主に4種類に分けられ、次のようなものがあります。

 

爪切りの種類

 

・クリッパー型:上下の刃で爪を挟んで切るタイプで種類も幅広く、安価で手軽に使える普及品。世界に誇れる商品が少なくない。

・ニッパー型:欧州では主流で、ペンチのような形状のやや大きな爪切。少ない力で爪を切ることができ、巻き爪といった変形爪、足の爪に適している。

・洋鋏型:一般的なはさみの形状だが、爪切り専用なので、刃先が厚く、反っている。乳児用には先が丸くなったものがある。

・和鋏型:洋式ばさみが入ってくるまでは、主流として使われていた。刃の部分は巾が広く、力が入るようになっている(おたふく型と呼ばれる)。

 

国産ニッパー型爪切りで有名なのは、金物の名産地・新潟県の諏訪田製作所でしょう。同社は大正末期の1926年、釘の頭を切るための「喰切」と呼ばれる道具の製造により創業。以来、爪切りをはじめとするニッパー型刃物の製造を行い、その技術の高さはプロのネイリストや医療従事者ほか、世界中で評価されています。

 

古代人はどうやって爪を切った?             

現代人の生活必需品である爪切りですが、遺跡や遺物が少なく、そのルーツは意外とよくわかっていません。では、爪切りのない時代の人たちは、どうやって伸びた爪を手入れしたのでしょう。これには諸説ありますが、たとえば古代人たちは歯で噛み切ったり、石で削るなどしていたと考えられています。また、野生動物と同じで、生活する中で折れたり、すり減ったりしているうちに短くなったともいいます。中には、「猛獣から身を守るため(戦う?)に伸ばしていたのでは?」とする説もあるようです。

 

はさみ自体は、紀元前1500年頃にはあったそうで、現存する最古のはさみ(「握り鋏(U型)」)は、紀元前1000年頃、ギリシアで作られたといいます。これは和裁などに使う「握り鋏(U型)」と同じ元支点型でした。また、紀元前27年の遺物とされる、帝政ローマ時代の鉄製はさみは、「洋ばさみ(中間支点型(X型ともいう))」と似たような形になっています。前者は羊毛刈り、後者は鉛や針金を切るのに使われたようで、爪切りとは程遠かったようです。

美しく色づけした長い爪は権力と富の象徴

爪切りは「伸びすぎると不便」だという理由からではなく、「爪を美しく保つ」ためにも使われます。爪を装飾する歴史は古く、たとえば古代エジプトの王や貴族は、呪術的なものがお洒落かははっきりしませんが、爪を赤く染めていました。また、それ以前から爪を清潔に保つため、男女ともマニキュア、ペティキュアをしていたそうです。

 

古代インド(紀元前4~5世紀頃)では、手の爪を長く伸ばし、中でも上流階級や資産家は専用の爪切りで手入れをしていました。対する一般庶民は爪切りを持てないため、「引きちぎる」「噛み切る」「粗い壁や鉄でこする」といった方法を用いていたようです。

 

また中国でも、位の高い、裕福な者は、小指と薬指の爪を5~6cmほど伸ばす習慣があったといいます。長い爪であるということは、労働で爪を傷めることがなく、上流階級であること示すものでした。それを象徴するのが、長く伸ばした爪を保護する「護指(指套、爪飾りとも)」で、西太后(1835年~1908年。清末の最高権力者)が着けていたことで有名です。清朝後期の后宮では、小指と薬指を伸ばし(長さが8cmに達するものもあった)、金、銀をはじめ、象牙、翡翠、べっ甲などを散りばめ、豪華な細工を施した護指が使われていました。今でいうネイルファッションを楽しんでいたということは、爪を整えるための爪切りや爪磨きは当然のようにあったのでしょう。

 

平安貴族は爪を切る日を決められていた?

平安時代の日本では日常的に爪の手入れをしていたようで、小刀で爪を切ったり,「爪磨(つまと)」と呼ばれる砥石(『延喜式(905年編集開始、927年完成)』に記述あり)で、爪を研いでいたとされています。当時の記録が残っている資料のひとつが、紀貫之の『土佐日記』です。それによると、貴族たちは爪を切る日を決められており、子(ね)の日は避けたという記述があります。また、藤原摂関家の祖で、有職故実に通じていた藤原師輔(908年~960年。右大臣。通称、九条殿。「九条年中行事」、日記「九暦」を残す)家訓には、「丑の日には手の爪、寅の日には足の爪」と記されており、この頃には爪切りの習慣があったことがうかがえます。

 

戦国期の様々なエピソードを収録した『備前老人物語(松浦鎮信。1549年~1614年。江戸初期の武将。肥前平戸藩主)』を紐解くと、戦国の三傑のひとり、織田信長も爪切りをしていたようです。信長の切った爪を片付けていたひとりの小姓は、1本足りないことに気付きます。主君にそれを問うと、信長の着物から爪がはらりと落ちたそうです。信長の周囲に目を配り、何があれば、直ぐに対応できる小姓に対し、信長は褒美をとらせたといいます。です。

 

江戸時代に入ると和ばさみが普及し、それが爪を切るのにも使われるようになりました。和ばさみの利用は明治時代になっても続き、爪切り専用の握りばさみも作られ、一般にも広まっていきます。現在、爪切りの主流となっている「折りたたみ式爪切り(ネイル・クリッパー)」が欧米から伝わったのは大正時代。当時のアメリカにはH.C.Cook社というメーカーがあり、「Gem」と名付けられた商品があったようです。1935年頃から国内生産が始まり、その後、様々なメーカーから多彩な爪切りが販売されます。

 

爪切りの切れ味はアルミホイルで復活する?アルミに強い日本軽金属

豆知識として、爪切りやハサミの切れ味を復活させるために「アルミホイルを切る」という方法があります。柔らかいアルミを切っていくうちに、研ぎ直され切れ味が戻ります。

このように、多種多様なニーズに答えられるアルミニウムを応用し、製品を提供しているのが我々の母体でもある日本軽金属です。アルミニウムに関する豊富な知見で、お客様のご要望にお答えします。アルミニウムを活用した製品の試作をお考えの方はぜひ我々Shisaku.comにお任せください。

 

参考サイト(爪切り)

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