2021/04/16
アルミニウムは、軽い・さびにくい・加工しやすいなどたくさんのメリットを持った金属です。そのため、家庭用品・工業用品を問わず大量に用いられています。ただ、「加工しやすい」といっても、溶接についてはやや例外かもしれません。どのような工夫をしてアルミニウムを溶接しているか、ご紹介しましょう。
身近に利用されている金属元素には鉄・銅・すず・チタンなどがあります。また、これらにほかの元素を合わせたもの(合金)にステンレスや炭素鋼があります。溶接しやすい金属の代表といえば鉄、逆がアルミニウムです。
アルミとアルミを溶接するのにどのくらい苦労をしているのかを、すぐに見られるのが自転車店です。
ほとんどの自転車フレームは、何本もの金属パイプを溶接して作られています。代表的な素材は、鉄にクロムなど足したクロモリ鋼、チタン、そしてアルミニウムです。フレームの継ぎ目を見てみましょう。ほかの2つに比べて、アルミ製のものは、継ぎ目部分の肉が一段と高くでこぼこに盛り上がっているのがわかるはずです。
使う溶接機のタイプが違う上、アルミ製の場合はそれを操作する人にも一段上のスキルが欠かせません。
アルミが溶接しにくい理由はいくつもあります。
また、「アルミ」といっても、実際にはほかの元素などとの合金として使うことも珍しくありません。それぞれに、溶接方法を微妙に変える必要まで出てきます。
また、「異種金属溶接」というやり方もあります。その名前のとおりに、違う金属の母材と母材を溶接することをいいます。もし、広く使われている代表的な金属である鉄とアルミニウムでできれば、使える場面は数え切れないぐらいでしょう。しかし、熱伝導率や融点などの性質が違いすぎて、今の技術では、そのままの両者を溶接するのは無理とされています。
レーザー溶接なども可能なものの、アルミにはよくTIG溶接や半自動溶接が使われます。
最も一般的なのはアーク溶接で、放電現象によって熱を発生せる方法です。一般的に溶接でイメージされる「火花が飛び散っている」は、ほぼこの方法と考えていいでしょう、しかし、アルミには使えません。
アルミの場合は、TIG溶接が一般的です。放電現象を利用していることではアーク溶接と同じで、「アーク溶接の一種」とされることも珍しくありません。最大の違いは、作業中に溶接個所に「不活性ガス(Tungsten Inert Gas)」を吹き付ける点です。こうやって、酸化などの化学反応が起こらないようにしているのです。
アルミの場合に使われる不活性ガスは、アルゴンやヘリウムです。化学反応しにくいので、爆発もしません。また、毒性もないので、極めて取り扱いやすいガスです。
TIG溶接は、もちろんアルミ以外の金属にも使えます。その場合、アーク溶接と比べてのメリットには次のようなものがあります。
一方、代表的なデメリットは次のようなものです。
半自動溶接もアルミニウムに使えます。というのも、放電現象を利用していることや不活性ガスを吹き付けながらの作業ができることでは、TIG溶接とおなじだからです。
最も大きな違いは、その細長い形から「ワイヤ」と呼ばれる接着のための金属が使われている点でしょう。ちょうど、はんだと同じような接着の仕方です。また、ワイヤが溶接棒の先端から自動的に供給されるために「半自動」の名前が付いています。
もちろん、このワイヤの素材は選ばなければいけません。相性がうるさいアルミは特にそうです。母材が純度の高いアルミならば、やはり純度の高いアルミを、合金ならばその組成に近い合金が母材ともよく融合するのはいうまでもありません。
このように、アルミの溶接は「決してできないわけではないが、少し癖がある」といったところです。そのため、全ての板金業社で取り扱っているわけではありません。
中でも、薄手のアルミ板は「残しておくはずの母材まで溶けて落ちてしまう」などの扱いにくさが極端になります。外注するときには、熟練した作業者がいるところを選びたいものです。
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