地球上で最も多い金属・アルミニウム しかし、発見されたのはたった200年前

2020/08/07

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鉄は紀元前5,000年ごろにはメソポタミア地方で使われていたようです。銅はさらに古く、やはりメソポタミアの約6,000年前の遺跡から加工されたものが発掘されています。このふたつは、その後、武器・農機具・工業製品などなど様々に使われるようになりました。ほぼ、文明とともに歩んできたといっていいでしょう。

 

一方、アルミは鉄や銅と同じく実用的な金属でありながら、金属の一種であることが確認されてからでも、約200年でしかありません。鉱石から取り出す方法が確立されたのは、もちろんその後で、今から130年ほど前です。

 

地球上で最も多い金属の元素アルミニウム

それだけ新しいにもかかわらず、アルミニウムはすでに身近な道具でも工業製品でも欠かせない存在になっています。

 

アルミニウムの性質

アルミニウムは元素記号は「Al」、原子番号は13です。質量で計算すると、地球の地殻の8.23パーセントを占め、これは酸素の46.4パーセント、ケイ素の28,15パーセントに次ぎます。金属だけでいえば、地球上で最多です。ちなみに鉄は5.63パーセントの第4位、銅に至っては0.0055パーセントの25位でしかありません(平凡社『世界大百科事典』による)

 

鉄や銅などと比べたときの特徴

  • 通常利用される金属の中では比重はマグネシウムの次に軽く、鉄の約3分の1。
  • アルミ箔(はく)で分かるように、延性・展性(破断せずに変形できる能力)が高い。
  • 熱伝導率は、その高さで知られる銅と比べても約半分。鉄との比較ならば約3倍ある。
  • 融点は660.4℃と低い。沸点は2,467℃。
  • 硬度は低め(軟らかい)で、スズと亜鉛の中間。
  • 可視光線や紫外線の反射率が高い。

 

資源量は豊富

アルミニウムは化学的に見ると、極めて活性が高い金属です。「ほかのものと反応してしまい、簡単に化合物になってしまう」と言い換えてもいいでしょう。窒素・炭素・ホウ素・ケイ素といった非金属元素とも直接化合物を作ることができます。なかなか発見されなかったのも、「自然界ではアルミニウムそのままでいることが、ほとんどない」のも大きな理由でしょう。

 

長石や雲母にも含まれるものの、ボーキサイトが最もアルミニウムの鉱石として利用されています。ボーキサイトの資源量は豊富で、「今のペースで100年以上採掘しても枯渇する心配はない」とされています。

 

アルミニウムが発見されるまで

アルミニウム自体は知られていなくても、その化合物は古くから利用されてきました。たとえば、宝石のサファイアやルビーもその本体はアルミニウムの酸化物です。

 

アルミニウムの語源は「ミョウバン」

最も古くから使われてきたアルミニウムの化合物はミョウバンがその代表でしょう。

 

ミョウバンにもいくつか種類があって、必ずしもアルミニウムは含んでいません。しかし、その代表的存在で単に「ミョウバン」と呼ぶときの多くは、アルミニウムカリウムミョウバンを指します。また、名前を一部省略して、「カリウムミョウバン」としたときも同じアルミニウムの化合物です。古くから使われてきたのもこのアルミを含むミョウバンでした。

 

中世ヨーロッパではメディチ家などが争奪戦

古代ギリシャでは既に、動物の皮を軟らかくしたり保存性をよくしたりする「皮なめし」には欠かせない成分だったようです。また、古代ローマではその消臭性と殺菌性を利用して、制汗剤・防臭剤としても用いられていました。

 

中世ヨーロッパでは繊維に色を定着させる媒染剤(ばいせんざい)としての重要性が増しました。媒染剤はヨーロッパ各国の基幹産業だった毛織物業には欠かせません。ミョウバンの確保を巡って、イタリアの名門貴族・メディチ家や、やはりイタリアの港湾都市・ジェノバなどがその販売権を巡って激しく争いもしました。ただ、16世紀17世紀と時代が進むと、ミョウバンの生産地と量が拡大し、次第に落ち着いたようです。

 

金属である可能性を指摘したラボワジェとは

アルミニウムの存在に気が付き始めたのは、18世紀も中盤になってからでした。何人かの科学者がミョウバン(酸化アルミニウム)からアルミを還元・分離しようとしました。A.L.ラボワジェもそういった1人でした。「質量保存の法則」を発見し、「酸素」の名前を付け、「近代科学の父」ともいわれるフランスの科学者です。

 

還元には成功しなかったものの、1782年、「ミョウバンは金属と酸素の化合物である」との説を出しました。また、その未知の金属に、「Alumine」との名前を付けました。

 

実際にアルミニウムが分離したのは、イギリスの電気化学者H.デービーで、25年後のことでした。また、このときにこの新しい物質に名前を付け、「aluminum」としました。これはミョウバンのラテン名「alumen」にちなんでいます。

 

アルミニウムの精錬方法が発明されたのは、1880年代です。今日最も身近にある金属のひとつになったのも、ここがスタートと考えていいでしょう。

 

アルミの利用を進歩させたのは日本の科学技術

大正から昭和にかけて、アルミの表面に酸化皮膜を作り、耐腐食性や硬度を増す技術が日本の半官半民の科学研究所である「理化学研究所」で発明されました。これには「アルマイト加工」と名前が付けられ、1931(昭和11)年には商標登録もされました。その翌年からアルマイト製品が登場しました。

 

もうひとつのアルミニウムの性質を上げるノウハウが合金です。中でもマグネシウムなどを加えるジュラルミンは、1906年にドイツで発明され、特に航空機材料としてさらなる改良が加えられました。日本が発明したものは、最高の強度を誇り、ESD(超々ジュラルミンextra super duralumin)と名付けられました。これは、1940(昭和15)年に制式登録された零式艦上戦闘機(ゼロ戦)で初めて使われ、その軽量化に大きく貢献しています。

 

このジュラルミンなどのアルミ合金は現代でも、航空機や自動車などの構造材、建築資材などとして欠かせない素材になっています。アルミはその重要性から、焼き鍛えた鉄である「鋼」、鉄とニッケルやクロムとの合金で耐食性の高い「ステンレス」とともに、「三大金属」との呼び方もされています。

 

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