最も身近なアルミ製工業製品・1円玉はどこで作られている?

2020/10/08

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アルミは鉄と並んで最も身近な金属です。いろいろなものに使われていますが、最も身近なものといえば、1円玉以上のものはないでしょう。

 

1円玉は、ともすると安っぽく見られます。紙幣・硬貨を通して最も安い通貨なので、仕方がないといえば仕方のないことでしょう。しかし、アルミ製品としての精度などは意外にすごい実力をもっています。

 

1円玉の歴史

当たり前にあるように思っている1円玉ですが、改めてその歴史を振り返ってみましょう。

 

1円玉はいつからある?

今の1円玉(1円硬貨)は、1955(昭和30)年に登場しました。ちなみに、5円玉は1949(昭和24)年ですが、その10年後に書体などのデザインを変更しています。今ある50円玉と100円玉は1967(昭和42)年、500円玉は2000(平成12)年からです。

 

「そのままのデザインで来ている」ことでは1円玉が硬貨の中で最も古いことになります。

 

1円玉がアルミ製の理由

素材は1円玉以外は銅とニッケルの合金、1円玉のみアルミニウム製で、それも純度100パーセントのものが使われています。

 

現行の1円玉の前には、1948(昭和23)年発行開始の銅・亜鉛合金のものがありましたが、わずか5年間で廃止されました。「原材料が高騰し、鋳潰(いつぶ)されて金属材料として使われてしまう可能性がある」が理由です。つまり、「お金として使うよりも、金属材料としてみたほうが価値が高い」ということでしょう。

 

どうやら、アルミが採用されているのには、「貨幣価値が低いのだから、原材料なども安くないといけない」という事情がありそうです。アルミニウム地金としてみた1円玉1枚分の価格は0.3円ほどなので、「鋳潰して金属材料として使ったほうが価値がある」とはならないようです。もちろん、「貨幣損傷等取締法」の違反ともなります。

 

ただし、アルミニウム地金を1円玉までにする加工コストもかかるので、「1円玉が1円では作れない」といったことは珍しくありません。近年では、1枚あたり約3円掛かっていると見られています。

 

1円玉の製造工程

よく知られているように、硬貨や紙幣の製造は国が厳しく管理しており、製造にも国の機関である造幣局が当たっています。しかし、製造コストなども考えざるをえず、1円玉については現在、途中までを民間企業が行い、造幣局では最後の刻印のみになっているようです。

 

円形とは

1円玉の製造は途中までは一般的なアルミ製品と変わりはありません。

 

アルミ板を丸く打ち抜きます。これを「円形(えんぎょう)」といいます。

 

それをプレスして、こんどは周囲だけを少し高くします。これを「フチ付け」といいます。フチを付けるのは、あとでやる刻印で模様をくっきりと浮かび上がらせるためです。

 

さらに、表面処理をした上、正確に作られているかどうかを検査します。大きさも、重さもミクロ単位の誤差も許されません。

 

この丸くてフチが付いただけののっぺらぼうのアルミ板は数をそろえたらようやく造幣局に送られます。

 

造幣局での作業

造幣局で、裏と表にそれぞれ刻印します。また、ほかの硬貨では周囲にギザギザを付けるのもこの工程で行いますが、1円玉の場合はそのままです。

 

必ずしも全部が正確に作られるわけではなく、ごくまれですが不良品も出ます。一円玉の場合は、「刻印の位置がずれる。極端な場合は、全体がほぼ平たいままで端っこだけずれた刻印がある」「表と裏に分かれていなければいけない刻印が、同じ面にされている」などが代表的なものでしょう。

 

しかし、通常は検査で取り除かれ、流通することはありません。外に出てしまうと、「エラー硬貨」ということになり、極端に珍しいのでマニアの間で高値で取引されています。

 

製造貨幣大試験

正しく作られているかどうかの検査は日常的に行われています。しかし、外部に対しても、「正しい品質で作られている」ということのアピールのためにイベント的に行われる検査があります。これを「製造貨幣大試験」といいます。

 

大阪の造幣局で行われ、現在は硬貨1,000枚まとめての重量の誤差を計測します。本来あるべき重さを「法定量目」といい、1,000枚あたりでは1,000グラム(1キログラム)、許容範囲はプラスマイナス7グラムです。2019年10月に行われた第148次製造貨幣大試験では、法定量目と実測値の差は0グラムでした。

 

1円玉の発行枚数は減少気味

1円玉の発行枚数のピークは、1989(昭和64、平成元)年の約25億枚でした。これは消費税が導入され、それまで日常的な買い物では10円単位の商品が多かったのに、消費税分(3パーセント)が加わったために、1円刻みでの支払いが増えたのを反映しています。

 

2016(平成18)年以降はほぼ、「貨幣セットの中の1枚」として作られるのみで、50万枚程度に留まっています。キャッシュレス時代を迎え、硬貨や紙幣全般に使うことがなくなっており、「時代の流れ」といったところでしょう。

 

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