フッ素加工・セラミック加工のフライパンも実は中身はアルミニウム

2020/05/19

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アルミニウムの製品は身近にあふれています。しかし、おそらくは気が付かずに、毎日使っている人も多いのがフライパンではないでしょうか。フッ素加工・セラミック加工となっていても、実は大半がその地金はアルミです。また、アルミだけで作ったフライパンは使いこなせると、料理の幅が広がります。料理自慢の人ならばなくてはならないアイテムでしょう。

 

フライパンの歴史

フライパン(fry pan、frying pan)の始まりには諸説あります。というよりも、形がシンプルな上、さまざまな用途に使えたので、「どこで、どのように始まった」と特定するのは無理ではないでしょうか。それでも、いくつかある説を挙げると、「遺跡から発掘されているので、古代ローマ時代にはあったのが分かる」「1700年代に北ヨーロッパで始まった」などとされています。 古くからの日本のもので近いものをあえて探すと、「焙烙(ほうろく)」になるでしょう。素焼きの浅い鍋(なべ)で、ゴマやお茶を炒(い)るのに使います。 金属製のフライパンが日本に入ってきたのは明治の末でした。そこから次第に広まり、どこの家庭にもあるようになったのは戦後のこととされます。当然、フライパンを使う洋風料理の普及と同時進行だったと考えていいでしょう。 ちなみに、「fry」を「揚げ物」と考えたり、実際にてんぷらなどを揚げるのにフライパンを使ったりする人もいます。しかし、単に「fry」だけならば、「油を使って調理する」ぐらいの意味で、揚げ物ならば「deep‐fry」の方がより正確な表現になります。ですから、フライパンも「揚げもの鍋」とは別のものと考えるようにしましょう。

 

素材や表面加工別、フライパンの特徴

現在出回っているフライパンの素材には、鉄・銅・アルミ・ステンレスなどがあります。ただ、実際には家庭で使われているものの大半は、フッ素やセラミックで表面を加工したものではないでしょうか。少し忘れられがちな、素材のままのものを中心に、それぞれの特徴をご紹介しましょう。

 

表面加工のフライパンが普及する前に最も一般的なフライパンの素材でした 一般的なものは、表面に付いた金属加工用の油を焼き切る「空焼き」や油がなじむまで使い込む「油ならし」などの手間が必要です。また、使った後にしっかりお手入れをしないとすぐに錆(さ)びてもしまいます。ただ、最近では空焼き不要などとしたものも登場しました。 メリットとしてはどんな強火でも変質しないことと、使えば使うほど油がなじんで、こびりつきにくくなることでしょう。これらの特徴から、特に炒(いた)めものには欠かせないフライパンです。 お手入れさえすれば、耐久性の高さはほかのどんな素材よりも上です。信頼できるメーカーのものならば、一生ものと考えてもいいでしょう。

 

錆びにくく、使った後は潜在とスポンジでゴシゴシ洗えば済むのは、鉄製のフライパンとの大きな違いです。また、熱伝導率が非常に高いので、調理中の食材に火力を一気に伝えることができるのも魅力です。 ただ、熱伝導力が高すぎて、焦げ付きにはやや注意が必要です。また、値段も高いこともあって、どちらかといえばプロ向きの調理器です。

 

アルミ

フライパンの素材としては、銅の次に熱伝導率がいいのがアルミです。やはり、焦げ付きやすいので、どちらかといえば低温での調理に向いています。典型がパスタにソースを絡めるような使い方です。 鉄や銅と比べると、軽いので女性が使うのにも向いているのではないでしょうか。明るい色なので、食材の調理具合がひと目で分かるのも大きなメリットです。

 

ステンレス

鉄・銅・アルミのものが、酸やアルカリなどで変質したり錆びたりすることがあるのに対し、その欠点をなくしたのがステンレス製のフライパンです。 ややこびりつきやすいのと、重いのが欠点でしょう。熱伝導率も低めです。ただ、「内側はステンレス。外側はアルミ」といったような工夫で、重量と熱伝導率を改善したものも登場しています。

 

フッ素加工・セラミック加工など

「フッ素加工(フッ素樹脂加工)」とは、フッ素を含んだ樹脂で内側のコーティングしたものをいいます。熱伝導率のよさと軽さから、ほとんどのもので地金にはアルミが使われています。 また、「マーブル加工」「ダイヤモンド加工」などとしているものもよく見かけるのではないでしょうか。マーブル(大理石)や人工ダイヤモンドの粉末を混ぜて耐久性を上げているだけで、基本はフッ素加工です。また、「テフロン加工」は米・デュポン社の登録商標で、フッ素加工と内容としては同じです。

 

こびりつきにくい、お手入れが簡単、軽いといった理由で、家庭用のフライパンの主力になっています。ただ、欠点は少なくありません。

 

  • 金属製のフライ返しなどですぐに傷が付く。ダイヤモンド加工などでは耐久性が高いが、傷が付かないわけではない。
  • 高温に弱い。250度前後で、コーティングがはがれはじめる。350度を超えるようならば、熱で分解され有毒ガスなどが発生する。
  • 調理した食材を長時間入れておくと、油などが染み込んでやはり、コーティングのはがれにつながる。

比較的近年、セラミックでコーティングしたものも登場しました。フッ素加工と比べると、傷つきにくく、高温にも耐えます。ただし、長年使っていると、コーティングがはがれなくても、こびりつきやすくなります。また、衝撃を与えると、その部分のコーティングが割れてはがれてしまいます。

 

アルミフライパンの選び方

コーティングなしのアルミフライパンはこびりつきやすいので、炒めものには向いていません。また、IH調理器は「オールメタル対応」などとした一部の機種しか対応していない上、使える場合でも軽すぎて過ぎて安定性に欠ける場合があります。

 

最初は、パスタとソースを絡めるなど、ガス火での水気の多い調理専用と考えたほうがいいのではないでしょうか。使い慣れてくると、熱伝導率のよさを生かして、オムレツや目玉焼きなどに思ったように火を通すことも可能です。

 

「メインのフライパンにはならないが、1枚持っていれば調理の幅が広がる」というのがアルミ製で表面加工していないフライパンです。料理自慢には欠かせないアイテムではないでしょうか。

 

もしも、大きさに迷ったら、ひとサイズ大きめのものにしましょう。軽いので、大きさは苦になりません。あとは、持ち手の素材にも注意が必要です。持ち手までアルミの場合、調理中に高温になりがちです。もし、鍋つかみなどを使うのが面倒に思うようならば、選択肢は少なくなりますが、木などほかの素材が使われているものを選んでください。

 

参考文献

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