熱さなくてもできる ボルトなど丸くて小さいものが得意な冷間鍛造

2021/02/08

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機械加工
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多くの人は、単に「鍛造」と聞けば、金属を高温にしてからハンマーなどでたたく熱間鍛造を思い浮かべるのではないでしょうか。これに対し、常温のままでたたくのを「冷間鍛造」といいます。素材が軟らかくなっていないので、成形がやりにくいのは間違いありません。半面、加熱しなくていい分、手間が少なくなります。さらには、「仕上がりの表面がきれい」「寸法の誤差が少ない」などのメリットがあります。ここでは、この冷間鍛造をご紹介しましょう。

 

冷間鍛造とは

鍛造にはいくつのかの種類の分け方があり、「冷間鍛造」は加工時の素材の温度によるものです。「冷間」の文字が入っていますが、あくまで「熱間」に対するもので、温度を下げるわけではありません。また、熱間鍛造と冷間鍛造の間の温度で加工する場合は「温感鍛造」といいます。さらに細分化することもあるものの、主なものはこれら3種類です。

 

素材を高温にしなくても鍛造はできる

鍛造の目的は成形でだけではありません。金属の結晶粒子を細かくし、靭性(じんせい、粘り気)などの強度を上げるのも大きな目的です。また、原材料から取り出すなどして素材化しただけの金属は、中に細かい空洞なども残りがちです。これをたたきつぶして密度を上げることでも強度が高まります。

 

素材を高温にするのは、素材が軟らかくなり、成形などがやりやすくなるからです。常温でやると、必要なたたく回数が増える・割れが生じやすいなどの問題がありますが、決してできないわけではありません。

 

熱間鍛造との比較でのメリット・デメリット

それどころか、冷間鍛造のほうが有利な点もあります。熱間鍛造と比べた場合のメリット・デメリットは次のようなものが代表です。

 

メリット

  • 加工スピードが速い。
  • 温度を上げる必要がないので作業がシンプルになる。
  • 作業中の温度変化による膨張・収縮がないので、寸法の狂いが少なく、精度の高い製品が作れる。

 

デメリット

  • たたく回数が多く圧力も高いので、金型も硬いものを使い、値段も高い。
  • 複雑な形状は苦手にしている。
  • 大型の製品はできない。

 

冷間鍛造で作られる部品

冷間鍛造でつくられる部品の代表は、ボルト・ナット・リベット・ギア、あるいは自動車などのクランクシャフトなどです。カメラ部品であれば、レンズフード・マウント(レンズ交換式カメラのレンズと本体の接合部分)・レンズの鏡胴などがあります。いずれも、硬さと正確な寸法が求められるものばかりと考えればいいでしょう。

 

もうひとつ、「断面を見ると、円形かそれに近いもの」という共通点があります。こういった形状のものを「軸対象物」といいます。軸物対象物が主になるのは、高圧で打撃を加えるために、しっかりと中心が取れるものでないと金型の一部にのみ負担がかかり、その金型が壊れてしまうからです。製品にも精度が出ません。

 

ほかの形状の製品も、断面が正方形かそれに近いものなど、やはり中心の取りやすいものが大半です。

 

冷間鍛造とアルミ合金との相性

最も早い時期の冷間鍛造では、金やアルミニウムなど常温でも軟らかい素材が好んで使われました。「金型への負担が小さい」と考えると納得がいくのではないでしょうか。しかし、今では鋼(鉄と炭素の合金)・ステンレス・各種のアルミ合金など、ほかの金属加工とは特に違いはありません。

 

特にアルミ合金の場合は、その種類によって性質が大きく変わります。たとえば、靭性を高めておけば、加工による割れなどのトラブルも少ないのは確かです。しかし、冷間鍛造で加工するからといって、そちらを重視でアルミ合金の種類を選ぶ必要は小さいと考えていいでしょう。

 

ほかの製造方法との比較

冷間鍛造、あるいは熱間鍛造であっても、よく比較の対象になるのは、切削加工と鋳造です。メリット・デメリットには以下のような違いがあります。

 

切削加工(削り出し)

塊になっている素材から、刃物や研磨剤で削って形を出す工法です。

 

金型が不要なのはメリットですが、その分作業に時間がかかり、大量生産にはあまり向きません。削りクズがでるために、素材には無駄がでます。また、冷間鍛造・熱間鍛造のように、素材の金属としての性質まで変えるわけでないので、製品の強度で劣ります。

 

半面、加工精度は冷間鍛造よりもさらに高く、複雑な形状も可能です。

 

鋳造(鋳物)

高温で溶かした金属を型に流し込み、冷やして固める方法です。

 

多量生産に適していて、コストも低くて済みます。複雑な形状も得意にしています。ただ、素材の金属としての性質まで変えるわけではないのは、切削加工と違いはありません。

 

さらには、「引け巣」の問題もあります。流し込むときに気体が混入したり、冷えていく過程で収縮したりすることでできる空洞をいいます。もちろん、製品としての強度が下がります。流し込むときに圧力を加える「ダイカスト」などで改善はできるものの、完全とは言い切れません。

 

まとめ 冷間鍛造には専門業者が多い

同じく鍛造といっても、熱間鍛造・温感鍛造・冷間鍛造では、必要な技術も装置も大きく異なります。そのため、金属加工業者のほうでも、単に「鍛造専門」ではなく、「冷間鍛造専門」を看板を掲げているところが少なくありません。もちろん、それだけが決め手になるわけではありませんが、もしも発注を考えるのならば、こういった冷間鍛造専門業者から候補に挙げていくのもひとつの方法です。

 

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