切削加工の後処理にかかせない 研削加工・研磨加工とは

2021/03/08

カテゴリー
機械加工
キーワード
研削加工01

研削加工と研磨加工は、しばしば混同される金属加工方法です。「研削」という言葉が一般になじみがないためか、金属加工関係者でさえ「研削」を「研磨」と説明してしまうことも少なくありません。「研磨して、部品のサイズ調整をした」などはその一例です。また、細かくみていくと、研削も研磨もそれぞれたくさんの種類があります。一度、しっかりと把握しておきましょう。

切削・研削・研磨・砥粒の言葉の意味の違い

「切削」と「研削」のように字面が似ていたり、「研削」と「研磨」のように加工内容が似ていたりするものもあります。いずれも金属加工ではよく出てくる言葉ですので、まずはこれらの違いをしっかりと理解しておきましょう。

  • 切削加工=フライスやバイトといった刃物類を使って、目的の寸法や形状にする方法。
  • 研削加工=砥石(といし)を使い、砥石側あるいは工作物側を高速回転させて微量ずつ削り取る方法。切削加工同様に、目的の寸法や形状にするために行う。
  • 研磨加工=砥石(固定砥粒)を直接工作物に当てたり、工作物と盤の間に高硬度の粒子(コンパウンド)を挟み(遊離砥粒)、両者に圧力を掛けた状態で動かしたりして、研削よりもさらに微量ずつ削り取る方法。工作物の表面を滑らかにするのを目的とする。
  • 砥粒(とりゅう)加工=固定・遊離を問わず高硬度の粒子を利用して、ごく微量ずつ削り取る方法。研削加工と研磨加工の両方が含まれる。

 

これらすべてが「削り取る」という作業です。除去加工・非除去加工の別でいえば、いずれも除去加工になります。

 

また、切削加工したままものは、あと少し寸法に正確さが欠けたり、表面が滑らかではなかったりといったことが珍しくありません。そのため、研削加工で寸法の微調整をしたり、研磨加工で仕上げをしたりといった処理がなくてはならないのです。

研削加工の内容と機器

研削加工では、切削加工ほどには大きく削ることはありません。そのため、主に切削加工を済ませた後の工作物の寸法精度を上げるために施されます。また、砥粒には非常に硬い素材が使われるため、超硬合金でできたものや焼入れ後のものなど、切削加工では無理な硬い工作物でも加工できるのも特徴です。

 

次のような種類があります。

 

  • 平面研削=文字通りに、工作物の平面に削りを掛ける方法です。円盤状の砥石を垂直に立てた状態で回転させ、側面を使うものや、砥石の丸い底面を工作物に当てて、その底面を水平に回転させるものなど、いくつかの種類があります。 ・円筒研削=円柱状の工作物に削りを掛けるときに使います。砥石は円柱
  • 円盤状になっていて、回転させて側面を使います。工作物の方には逆回転を掛けた状態で接触させます。
  • センタレス研削=円筒研削に似ていますが、工作物に直接力を伝えて回転させるのではなく、砥石と反対側にある調整車と呼ばれる円筒状の部品と挟み込みます。固定していないので、工作物が次々に取り換えられるのが特徴です。
  • 内面研削=リング状やパイプ状の工作物の内部に、回転する砥石を入れる方法です。もちろん、内部に対して削りを欠けます。工作物の方は逆回転させる場合と動かさない場合があります。

また、これら以外に歯車研削やネジ研削といった、工作物に特化した検索方法やそのための機器があります。

研磨加工の内容と機器

研削加工02

最大級の精度が求められたり、見た目の美しさが必要になったりする場合に、仕上げとして施されるのが研磨加工です。工程としては、次の4つに大きく分けることができます。ただし、製品ごとに仕上げ方の必要が異なり、最後までやるものとそうでないものがあります。

 

(1)下地=すでに研削である程度の凹凸は取り除かれているはずです。それをさらに綿密に行います。

 

(2)ならし=下地まではまだ、表面はざらざらです。それを平にならしていきます。

 

(3)つや出し=平らになった工作物の表面から、汚れをとりのぞくことで、つやを出します。

 

(4)鏡面仕上げ・ヘアライン加工・エンボス仕上げ=さらに磨き上げて、鏡のようにするのが、「鏡面仕上げ」です。ただし、鏡面仕上げは使いだした後からの傷も目立つために、「ヘアライン加工」「エンボス仕上げ」といったようにわざと模様上の凹凸をつけることもあります。

 

ヘアライン仕上げなどは例外として、通常は(1)から(4)へと順々に砥石やコンパウンドの粒子を細かくしていきます。

 

また、これらには以下のような研磨方法が使い分けられています。

  • 研磨布紙加工=帯状の布の表面に砥粒を付着させた研磨ベルトを使います。これが輪っか状になっていてモーターで回転します。「サンドペーパーで磨くのを、機械仕掛けにしたもの」と考えればいいでしょう
  • 砥石研磨=高速で回転する砥石などを工作物に当てる方法です。鏡面仕上げなどのときには、砥石ではなく、フェルトなどの軟らかいものも使います。
  • ラッピング研磨=加工物を盤の上に置き、その間に研磨液を置いてすり合わせる方法です。

また、鏡面仕上げならば盤にフェルトなど軟らかいものを使います。この場合は「ポリシング研磨」と呼びます。 また、電解作用や化学反応を利用し、表面を溶かして滑らかにする方法を採ることもあります。これは「研ぎ」も「磨き」もしませんが、同じ目的で施されるので、それぞれ「電解研磨」「化学研磨」と呼ばれます。

 

ガラスやダイヤモンドにも研削・研磨の対象

研削加工や研磨加工をする素材は金属に限りません。ガラス・宝石・石材など、おおよそ硬くて加工の必要のあるものはすべて対象になります。たとえばダイヤモンドの場合、それ以上硬い物質はないため、ダイヤモンドの粉末を砥粒にして研磨を行います。

 

ガラスレンズも研削・研磨で作られる

カメラに使われるガラスレンズでは、高温になった金型でプレスして最終的な精度にまで一気に成形する「ガラスモールド」も普及してきました。しかし、ほぼ「非球面レンズ」という特殊なレンズの限定の製造方法です。

 

大半のカメラ用ガラスレンズは今でも研削加工・研磨加工をし、あとは洗浄やコーティングをして完成します。たとえば、キヤノンの場合、「レンズ表面を研削加工で100ナノメートル(1万分の1ミリメートル)の精度にし、研磨加工で1ナノメートル(100万分の1ミリメートル)レベルの凹凸にする」としています。

 

「切磋琢磨」の「磋」と「磨」は研削・研磨の意味

「磨製石器」もその名前通りに石材を磨いて作られています。日本では約3万年前にはすでに作られていました。包丁・斧といった刃物のイメージが強いかもしれませんが、農具・工具・装身具も出土しています。

 

また、四字熟語の「切磋琢磨(せっさたくま)」も、この内の2文字は研削・研磨を、残りの2文字も硬い素材の加工方法を意味しています。「骨は切り・象牙は磋(と)ぎ・玉は琢(う)ち・石は磨く」ということで、出典は中国最古の詩集とされる『詩経』です。もちろん、「努力に努力を重ねる」「仲間同士、競い合って互いに向上する」といった意味です。

 

研削加工・研磨加工がなければ精密部品は成り立たない

研削加工03

研削加工も研磨加工も、切削の加工品への後処理として施されます。研磨まで必要になる製品には、自動車や工作機械のベアリング・航空機エンジンの回転部品など無数にあります。機械部品の製造装置も例外ではありません。

 

いずれも、精密で耐久性も高くなければならないようなものばかりです。研削加工・研磨加工は比較的地味な作業であるのも否定できませんが、機械産業の土台を支えているのも確かです。

 

参考サイト

キーワード

ページトップに戻る