2021/03/15
マシニングセンタをまだ導入していない企業からしばしば聞こえてくるのは、「操作するには専門的知識が必要なのでは?」「工業高校や機械学科出身の社員が用意できない。だれに担当させていいかわからない」の声です。確かに機能は盛りだくさんで、構造も複雑です。
ただ、その機能のひとつひとつはいずれも切削加工の範疇(はんちゅう)にほぼ収まるものです。切削加工・機械加工の一般的な知識さえあればすぐにマシニングセンタも理解できるでしょう。また、操作するのも、もっとシンプルなNC工作機械と大きな違いはありません。
とっつきにくさの原因のひとつになっているかもしれない、「マシニングセンタ(Machining Center)」の名前の意味から考えてみましょう。 「machining」の元になっている単語は「machine」で、名詞としては「機械」、動詞としては「機械に掛ける」や「規定の寸法に仕上げる」です。
また、「センタ(center)」は、旋盤を操作する人には特になじみものでしょう。加工する素材を固定し、かつ回転運動をさせる部品です。正確に回転させるために円柱形の素材の断面中央を必ずとらえるようになっているので、「center」の名前がついています。
結局、「Machining Center」で「加工機械」「工作機械」程度の意味でしかありません。ただ、これでは実際のものとの隔たりが大きいので、日本語に訳すときは「複合切削工作機械」などになることが大半です。
1958(昭和33)年、アメリカのカーネィ・アンド・トレッカー社(Kearney & Trecker Corporation)は作業を大幅に自動化したNCフライス盤を開発しました。 このときすでに、4軸制御が可能で、自動工具交換装置(ATC)・パレット交換装置(APC)も備えていました。これがマシニングセンタの元祖とされ、名前も「Machining Center」でした。
1980年代以降、マシニングセンタを始めとするNC工作機械の開発・生産は日本が中心でした。また、今でも多機能化は進んでいて、便利になると同時に、必要な知識もやや増えています。
マシニングセンタは、JIS(日本工業規格)でも定義されており、「工作物の取り替えなしに2面以上についてそれぞれ多種類の加工を施す数値制御工作機械。工具の自動交換機能又は自動選択機能を備える」(JIS B0105)となっています。 もっとシンプルには、「NC制御でき、フライスやドリルなどを自動で交換できるフライス盤」と考えればいいでしょう。
同じような工作機械に、「ターニングセンタ」があります。違いはとえば、ターニングセンタは基本が旋盤であることです。ただし、近年は1台でマシニングセンタとターニングセンタの両方の機能を持つ複合機も登場しています。
難しい単語が多い印象を受ける間にマシニングセンタですが、実は押さえておくべきものは数個か10個程度でしかありません。
マシニングセンタのデメリットは、ほかのNC工作機械と基本的には変わりません。NCプログラミングができる作業者が必要になります。また、高性能で複雑な分、導入費も跳ね上がります。もちろん、様々な機種がありますが、本体だけでも数千万円と見ておいたほうがいいでしょう。
メリットも共通です。複雑な形状の製品が、しかも短時間で作れ、品質のばらつきも少なくなります。また、大半を機械任せにできるので、人件費は削減でき、労働災害も減ります。マシニングマシンの場合は、作業の同時進行ができるので、これらのメリットもより大きくなります。
ただし、製品の仕様や生産量などでこれらメリット・デメリットの度合いも変わってきます。「あえて導入する必要はない」「一部だけをマシニングセンタに交換する」といった選択肢も考えてみる必要もあるでしょう。
キーワード