アルミ板金の曲げ加工 業者のスキルと合金の配分に注意

2021/04/05

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機械加工
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曲げ加工01

曲げ加工ははた目から見ると、シンプルな作業に見えるかもしれません。しかし、実際にはいくつもある金属加工の中で、最も作業者のスキルが品質を左右します。また、アルミ合製の板金でもありふれた加工ですが、どんなアルミ合金でもできるわけではありません。「アルミ板金の曲げ加工」は奥の深い世界です。

 

金属は思ったとおりに曲がってくれない

素材を曲げる加工は、樹脂や木材でもあります。しかし、単純に「曲げ加工」といった場合は、金属の話と考えていいでしょう。独特の難しさがあり、以下のようなトラブルも起こりがちです。

 

  • 曲げようと思ったポイントで曲がらない。予定していた形や角度にならない。
  • 素材が割れてしまった。割れまではしなかったが、強度が落ちてしまった。
  • 完成したはずだったのに、その後に変形してしまった。
  • 見た目が汚い。

 

機械の助けも借りますが、多くの場合、肝心のところは手作業です。作業者の経験ばかりではなく、勘が必要になることも珍しくありません。「職人技の世界」と考えていいでしょう。

 

曲げ加工の基本は3、4種類

曲げ加工02

細かくみると、曲げ加工の種類は無数といっていいぐらいあります。大まかには、次の3つ、ないし4つで考えるといいでしょう。

  • ロール曲げ=最もよくある方法では、片側に2個、反対側にそれらの間に潜り込むようにしてもう1つのロールを設置する。この間を通すことでカーブを付ける。素材を送りながら連続的に作業できるので、「送り曲げ」ともいう。
  • プレス曲げ=「型曲げ」ともいう。これら名前の通り、型に押し込むことで素材を曲げる。曲がる形によって「L字曲げ」「U字曲げ」「V字曲げ」などとよばれることも多い。
  • フランジ成型=「L字曲げ」では、折り曲げた部分が直線になる。それが曲線など、より複雑になったもの。
  • 手板金加工=使うのはハンマーや、素材に当てハンマーで打つ「当盤(あてばん)」ぐらい。つまり、まったくの手作業でも曲げ加工を行うことがある。

 

アルミニウムと曲げ加工の相性

当然のことながら、曲げ加工に適した金属とそうではないものがあります。

 

曲げ加工は塑性加工の一種

「塑性」とは、「固体が一定以上の変形をしたときに、元には戻らない性質」のことをいいます。

 

また、この塑性を利用したのが、「塑性加工」です。金属の場合は圧延・鍛造・ダイカスト・プレス加工などがあり、もちろん、曲げ加工もその一種です。

 

曲げ加工に向いている金属の条件

塑性が低いと、いったん曲げてあっても、元に戻ろうとして変形してしまいます。もちろん、塑性が高いほど曲げ加工に適しています。

 

もうひとつ、「靭性(じんせい)」も見落としてはいけません。「粘り強さ」や「伸びやすさ」のことをいい、靭性が高いほど、曲げ加工を施しても、亀裂が入ったり、その亀裂が広がったりしません。

 

アルミは合金にすることで曲げ加工に使いやすくなる

一般的に、最も曲げ加工に適しているとされる金属は鉄です。アルミニウムはそれほどではありません。ただし、これはそれぞれ純度の高いもので比較した場合です。

 

特にアルミの場合は合金にする(様々な元素を添加する)ことで強度や耐食性などの性質を様々に変えることができます。靭性と塑性も例外ではありません。ただ、単純に曲げ強度だけを重視すると、ほかの性質が犠牲になってしまう可能性があります。必要な性質それぞれに優先順位を付けて、合金を選ぶようにしましょう。

 

JIS番号でいえば、マグネシウムなどを添加したA5052が強度・耐食性もアルミ合金の中では標準的で、塑性や靭性も悪くありません。つまり、バランスがいいので、曲げ加工が必要なときによく使われています。

 

プレス加工と曲げ加工の違い

曲げ加工03

「金属の板を曲げる」という塑性加工には、ほかにプレス加工があります。実際に作られたものを見ても、どちらの方法が採られたかわからないことも珍しくありません。ただ、以下のような違いがあります。

 

  • 曲げ加工は製品ひとつひとつに人手がかかるのに対し、プレス加工は金型さえ作ってしまえば、あとはかなりとのころ機械まかせにできる。
  • 同じ理由で、プレス加工の方が作業する人のスキルを問わない。
  • ひとつひとつの製品を作る時間が短くて済む。 これらの理由から、プレス加工の方が大量生産に適しているのは間違いのないところでしょう。 一方で、曲げ加工には次のようなメリットがあります。
  • プレス機は高額だったり、設置に広いスペースも必要だったりで、大きめの設備投資が必要になることがある。曲げ加工の機器は手作業中心なので、その反対。
  • いったん製造が始まった後でも、仕様をこまめに変えることがきる。改良なども加えやすく、注文の変更にも対応しやすい。

 

曲げ加工の中でも、業者ごとに得意分野・不得意分野がある

ほかの板金加工にもいえることですが、同じように曲げ加工といっても、業者ごとにその中での得意と不得意があります。

 

ただ、選び方としては特別なことはありません。「質問にはしっかりと回答してくれるか」「作業場は整理整とんされているか」などをチェックすることになるでしょう。

 

また、個人のスキルに左右されることが多いために、「技術を持っていた人が退職したために、製品の質が落ちた」といったことが起きるリスクもあります。取引が始まった後でも、注意しておくようにしましょう。

 

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