急がば回れ 簡易金型による試作で、量産体制を確実にする

2021/05/14

カテゴリー
機械加工
キーワード
簡易金型01

家電製品・輸送機器・建築資材など、金型で作った部品を使っている工業製品は数え切れません。たとえば、スマホの外装部分は、金型に溶かした樹脂を流し込んで作られます。もちろんどんな部品用か次第ですが、高い精度が必要なものが珍しくありません。そういった場合によく行われるのが、「いきなり本番の金型を作るのではなく、試作・チェック用の金型を作る」です。この試作用のものは「簡易金型」と呼ばれます。

 

量産体制のカギを握る金型

大量生産には金型は欠かせません。当然、それを使って作った部品の品質だけではなく、それら部品を使った最終製品の品質も左右します。

 

金型の使い方

金型はもちろん、「素材をその凹凸に合わせることで、同じ形の部品をいくつも作る」ためのものです。ただ、もう少し正確に見ると、次のようなやり方に分けることができます。

 

  • 鋳造=溶かした金属を流し込む。硬貨がこの代表。
  • ダイカスト=鋳造の一種だが、特に金属を流し込むときに圧力を加える方法をいう。単純な鋳造よりも精密な部品が作れる。
  • 鍛造(型鍛造)=金属の素材を金型に押し当て、ハンマーなどでたたくことで、成型する。刀などを作る場合なども「鍛造」と呼ぶため、金型を使ったときは特に「型鍛造」の言い方もする。
  • 流し込み=溶かして金型に入れることでは、鋳造とちがいはない。プラスチックなどの樹脂やガラスの場合は、「流し込み」という。また、圧力を加えながら狭い隙間に入れるときは特に、「射出成型」と呼ぶ。
  • プレス加工=対になった金型で、素材の裏と表から圧力を加える。よく用いられる素材は板状の金属だが、樹脂などの場合もある。・押出=金型に入れられた素材に高い圧力を加え、わずかな隙間から押し出すことで求める形状に加工する。

 

自動車を例にすると、エンジンの外装はダイカスト、ドア板や屋根板はプレス、樹脂製部品の大半は流し込みで作られています。

 

金型ができるまでの手順

金型を完成させるのはかなりの手間です。しかし、完成し工場ラインの一部として稼働し始めれば、部品類の大量生産が可能になります。手間やコストを惜しむわけにはいかないでしょう。おおよそのところ、次のような手順で進めます。

 

  • 立案=金型業者との打ち合わせが必要になる。ほとんどの場合、依頼主側からはイメージ図・3Dデータ・サンプルなどを用意する。
  • 詳細設計=打ち合わせの内容に応じて、業者側が金型の設計図を作製する。「設計図」といっても、必ずしも平面のものとは限りらない。近年ではCAD(コンピューター支援設計)を使って、そのまま3Dプリンター用にデータ化することも増えている。
  • 加工・製作=ここからがようやく実際の加工に入る。金型には精密さと耐久性が求められることが多く、その分、多種多様な工程が欠かせない。ざっと挙げると、粗加工(穴あけなど)、焼き入れ・焼き戻し、削り出しなどがある。最後は研磨だが、これは手作業になることがほとんど。

 

こうやって作ったものを検査し、もし必要ならばその金型を量産します。

 

製作&量産の前に、試作をしたほうがいい理由

「加工・製作」の前に、「簡易金型」を制作することも珍しくありません。また、「より間違いのない金型を作る」ということでは、それがおすすめです。

 

簡易金型とは

簡易金型は、「金型の試作品」と考えればいいでしょう。ただ、それだけではありません。加工する素材が金型に負担を掛けないものならば、そのまま本番の金型として使い続けることも考えていいでしょう。

 

逆に金属板のプレス加工のように、硬い素材を加工するのならば、変形してしまうことが多く、「数回使えたらいい」といったような割り切りも必要になります。また、簡易金型に使われるのはアルミニウムがほとんどです。アルミの融点が低いために高温で溶かした金属素材を流し込む鋳造では「簡易金型はまずはありえない」と考えておきましょう。

 

簡易金型がアルミニウムで作られるわけ

こういった事情がありながら、アルミニウムが用いられる理由には次のようなものがあります。

 

  • アルミニウムは加工が簡単なので、複雑な形状も作りやすい。
  • 同じ理由で、短期で納品できる。何度か作り直しをする可能性のある試作では大きなメリット。
  • 多くない数で、低温・軟らか目の素材(高硬度樹脂ぐらいまで)であれば、量産型金型(本式の金型)と同様に使うことができる。
  • 同じ理由で、検査に使う場合も本式のものとの違いが出にくい。

 

切削加工や3Dプリンターまで含めて検討することが必要な場合もある

簡易金型01

簡易金型は設計から始めるのが通常なので、当然のことながら、出来上がりは設計者のスキルに左右されます。また、精密な加工技術も欠かせません。特に最後の最後に来る研磨は、ほとんどが手作業になることもあって職人技の世界です。業者選びの手間を惜しまないようにしましょう。

 

ただ、作る個数や形状次第では、単純に削り出しだけで済ませる「切削加工」や、3Dプリンターで作った製品から量産用の型を起こしたほうが、納期が短くコストも安く済む可能性があります。簡易金型以外も含めて広く情報を持っておいたほうがいいでしょう。

 

参考サイト

キーワード

ページトップに戻る