2021/09/27
金属加工の中で「板金」の名前がついているものには、そのままの「板金」、「精密板金」、「試作板金(板金試作)」などがあります。
精密板金は、その字面から「精度の高い板金」と考えるかもしれません。実はそれ以外の要素が多く、全く別のものと考えたほうがいいぐらいです。一方、精密板金と試作板金では重なる部分も多く、同じものとして扱われることも少なくありません。
外部に発注する場合は、何が同じで何が違うのかをしっかりと意識しておく必要があります。
精密板金で使われる金属板は厚みが1〜3ミリ程度のことがほとんどです。これに対し、板金本来の意味である曲げ加工だけではなく、切断や溶接、さらには表面加工まで行うのが精密板金です。
許される寸法の狂いを公差といい、もちろん、製品ごとに異なります。精密板金の場合は、曲げ加工のその曲げ具合の公差が0.1ミリか0.2ミリ、あるいはそれ以下が大半です。一般的な板金ももちろん製品次第ですが、その10倍ぐらいでも許されることが珍しくありません。
また、中には「超精密板金」と呼ばれるものもあります。この場合の曲げ加工の公差は10ミクロン(0.01ミリ)前後を求められていると考えていいでしょう。
「精密板金(加工)」を施された部品が使われているのは、自動車・電子機器・医療機器・OA機器など身近にいくらでもあります。しかし、製造装置の部品類としても欠かないことも見落としてはいけません。つまり、「精密板金の部品がなければ製造装置も作れず、様々なほかの部品も作れない」ということです。
また、電子部品の多くは、超精密板金レベルの精度がなければ実用には堪えません。
「板金」の意味は、国語辞典の上では「金属板を曲げたり絞ったりして加工すること」です。しかし、「精密板金」では実際に施される加工のごく一部でしかありません。
精密板金の業者の多くは、次のようなことまでカバーすると考えておいていいでしょう。
さらには、めっきや塗装まで一貫して請け負う業者も珍しくありません。
こうやって見るとわかるように、精密板金では「最初の2Dまたは3Dデータ作成を例外として、金属加工にかかわるすべてを行う」といっても言い過ぎではないぐらいです。しかも、機械類・道具類の助けも借りるものの、ほとんどが手作業です。それでいて、ほんのわずかの狂いしか許させません。
業者選びには、これまで作ってきた製品のチェックも大事です。それだけではなく、それぞれの加工ごとに「設備は整っているか」「熟練の職人はいるか」といったことも大事な判断材料となるでしょう。
しばしば、「精密板金」と同じような意味で使われるのが、「試作板金(板金試作)」です。
業者らも「自分たちをどう呼ぶか」で迷うようで、「精密板金・試作板金の○○社」「精密板金で作る試作板金」「精密試作板金加工」といった表現が彼らのホームページでも見られます。
言葉の上での違いを強いていえば、「量産体制に移る前に、検証のための品を作る。その際、量産品よりも一段精度を上げておくことが多い」のが試作板金、「試作であるかどうかに関係なく、ごくわずかの公差しか許されない品を作る」のが精密板金といったところではないでしょうか。
発注主側としては、特に区別する必要はないでしょう。「高い精度が必要」「例外もあるが、少ロット生産が前提」「板金を含むほとんどの金属加工まで一貫して請け負う」ということでは同じです。
精密板金では、金属板に対する加工を一通りやります。いくら精密板金専門の業者とはいえ、このすべてに一流ということは現実にはほとんどありえません。自社がほしい部品のどこのハードルが最も高いのかを考えて、その部分が得意な業者を選ぶ必要があります。
また、その業者選びの際は、「試作板金」としてやっているか、「精密板金」としてやっているかはほとんど気にしなくていいでしょう。ただし、依頼するのが試作ではない精密板金で、しかも大ロットが必要ならば、当然のことながら生産量についての能力もチェックするのを忘れないようにしましょう。
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