2022/02/07
鋳造は溶かした金属を単純に型に流し込み、冷やして固める金属加工技術です。大量生産に適している上、熱で溶かすことのできる金属であれば、素材として使えないものはほとんどありません。
ただし、単純な方法では、その中に気泡が残って強度が落ちるなどの問題が出がちです。これでは現代の工業製品に必要な品質には達しません。そのため、様々に工夫が重ねられ、種類も増えました。それぞれ、どういった違いがあるか理解しておきましょう。
鋳造は紀元前4000年ごろにメソポタミアで始まったとされています。このとき使われた素材は銅をメインにしてスズなどを混ぜた青銅でした。この青銅器が文明を支えていたことから、中東や中国の古代のある時期を「青銅器時代」と呼ぶほどです。
日本でも古墳時代の銅鏡・銅鐸(どうたく)などは青銅器です。また、奈良の大仏(東大寺・毘盧遮那仏)は安置するその場所に足場が組まれ、下から8段に分けて金属を流し込んだと考えられています。
近代以降の産業も支えました。中でも生産地として知られていたのは埼玉県川口市です。1962(昭和37)年には吉永小百合主演の映画の舞台ともなり、そのタイトルのまま『キューポラのある街』と呼ばれました。「キューポラ」とは、金属を溶かす炉のことです。
川口市での生産品でもかつて見られたように、鋳造には家庭用品からハイテクを支える機械部品まで多種多様なものがあります。
家庭用品の鋳造については、その製造方法も製品も「鋳物」と呼んだイメージがわくのではないでしょうか。たこ焼き用の鉄板やステーキ皿がその代表でしょう。
また、伝統的工芸品の側面が強い南部鉄瓶も鋳物です。南部鉄瓶の場合の鋳型は粘土を焼いて作ります。また、外側と内側の両方つくらなければいけません。その隙間に溶かした鉄を流し込み、鉄が固まったら、鋳型を壊して取り出します。
ただし、家庭用の鋳物の生産量はほんのわずかでしかありません。国内生産量の3分の2までが輸送機器用、4分の1が一般・電気機器用です。
また、「輸送機器用」といっても、その大半が自動車用と考えていいでしょう。シリンダーブロック・エンジン用ピストン・クランクシャフトなど自動車には鋳造で作られた部品が無数にあります。タイヤのホイール部分も多くが鋳造です。
また、これら以外で身近にあり、見た目にもわかりやい鋳造の代表は、マンホールの蓋(ふた)あたりでしょう。
自動車用だけを見てわかるように、求められる性能が異なる様々な場所に鋳造の部品が使われています。それだけに鋳造方法にも改良が加えられたくさんの種類があります。
鋳造で出るトラブルはその数も種類も決して少なくありません。
これらの対策のため様々な鋳造方法が使い分けられています。以下はその一部です。
まず、砂をメインとした鋳型の材料に、製品の原型(木型や樹脂型)を押し当てて突き固めます。その原型を外してできた空洞に、湯(溶かした金属)を流し込みます。もっともシンプルなやり方で、コストも小さい部類で試作に向いている方法と言えるでしょう 。
その一方で、精度は金型には及びません。また、原型が空気中の水分を吸ってしまい、時間の経過とともに反ってしまうので、原型の寿命が短いのが欠点です。
また、砂の他に石膏で型を作る石膏鋳造法という手法もあり、砂型よりも高い寸法精度を出すことも可能です。
鋳型を金属で作ったものをいいます。砂型鋳造法での砂の鋳型が使えるのは1回限りです。一方、金属ならば数千回から数万回も使え、大量生産に向いています。また、精密なものも作ることができます。
ただし、金属製の鋳型を作るのが初期費用としてかかって来ます。また、あまり大きなものや複雑な形のものについては限界があります。
金型鋳造法の一種で、それを改造したのがダイカスト法です。流し込む湯に高い水圧や空気圧を加え、確実に鋳型の隅々にまで行き届かせます。高い精度が出すことが可能なため、自動車部品ではもっとも一般的な方法になっています。
また、同じ目的で鋳型を回転させて遠心力を利用する場合は遠心鋳造といいます。パイプやリングのように中空で、しかも高い精度と強度が必要な製品によく用いられます。
一口に鋳造といっても種類がたくさんあり、それぞれに一長一短です。特徴をとらえて、自社にとって必要なものを選ばなければいけません。たとえば、無駄に精度と強度を求めると、その分コストがアップします。
また、鋳造で作る製品の大半は、大量生産が前提になっています。それだけに試作段階での十分な検討が欠かせません。もし、試作品作成に自信が持てないようならば、この部分だけでも、外注も考えて見ましょう。
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